20世紀最大級のスペクタクルとしてのスターリンの国葬、スターリンの独裁体制と後の大粛清につながる裁判―そして人類史上最大の悪が行われたホロコース
トの現場。 時代と群衆に眼差しを向け、映画に新たな視座を提示する、鬼才セルゲイ・ロ
ズニッツァ作品、待望の日本初公開 |
「国
葬」 2019年オランダ、リトアニア 135分 1953年3月5日。スターリンの死がソビエト全土に報じられた。モスクワ郊外で発見された
スターリンの国葬を捉えた大量のアーカイヴ・フィルムは、同時代の200名弱のカメラマンが撮影した、幻の未公開映画『偉大なる別れ』のフッテージ
だった。そのフィルムにはモスクワに安置された指導者の姿、周恩来など各国共産党と東側諸国の指導者の弔問、後の権力闘争の主役となるフルシチョフら政府
首脳のスピーチ、そして、ヨーロッパからシベリアまで、国父の死を嘆き悲しむ幾千万人の人の顔が鮮明に記録されていた。67年
の時を経て蘇った人類史上最大級の国葬の記録は、独裁者スターリンが生涯をかけて実現した社会主義国家の真の姿を明らかにする。 |
「粛清
裁判」2018年 オランダ、ロシア 123分 あらす
じ 1930年、モスクワ。8名の有識者が西側諸国と結託しクーデターを企てた疑いで裁判にかけられる。
この、いわゆる「産業党裁判」はスターリンによる見せしめ裁判で、90年前に撮影された法廷はソヴィエト最初期の発声映画『13日(「産業党」
事件)』となった。だが、これはドキュメンタリーではなく架空の物語である―。発掘されたアーカイヴ・フィルムには無実の罪を着せられた被告人たちと、彼
らを裁く権力側の大胆不敵な共演が記録されていた。捏造された罪と真実の罰。スターリンの台頭に熱狂する群衆の映像が加えられ再構成されたアーカイヴ映画
は、権力がいかに人を欺き、群衆を扇動し、独裁政権を誕生させるか描き出す。 |
「アウ
ステルリッツ」 2016年ドイツ 94分 ベルリ
ン郊外。真夏の陽光を背に吸い寄せられるように群衆が門を潜っていく。“Cool
Story Bro”とプリントされたTシャ
ツを着る青年。辺り構わずスマートフォンで記念撮影をする家族。誰かの消し忘れた携帯からはベートーヴェン交響曲第五番「運命」の着信音が鳴り響く。ここ
は第二次世界大戦中にホロコーストで多くのユダヤ人が虐殺された元強制収容所だ――― 戦後75年、記憶を社会で共有し未来へ繋げる試みはツーリズムと化していた。私たち
は自らの過去にどのように触れたらよいのだろうか。ドイツ人小説家・W.G.ゼーバルト著書「アウステルリッツ」より着想を得て製作した、ダーク・ツー
リズムのオブザベーショナル映画。 |