講演「北方領土問
題の『原点』と『現点』
―現在の対ロシア領土交渉を
どう見るか」
佐
藤史人氏 名古屋大学
法政国際教育協力研究センター・教授
<講演概要> 北海道根室の納沙布岬から北方領土の歯舞諸島までの距離は、わずかに3.7キロ。こ
れまで停滞してきた私たちの眼前の地をめぐる係争は、2016年に安倍首相が「地球儀を俯瞰する外交」の一環として、ロシアと領土問
題を解決し、平和条約がない異常な状態に終止符を打つことを宣言してから、再び注目を浴びるようになりました。 2016年10月に日ロ経
済協力プランが策定され、同年12月に山口県で日ロ首脳会談が行われるなど、領土返還に向けた一定の期待
が、社会の中にも膨らみました。しかしそれから2年余を経った現在、安倍政権は、これまでの外交方針を覆し、4島返還に拘ら
ない姿勢を示す一方で、ロシアは1島たりとも引き渡しを約束しようとせず、領土交渉は再び暗礁に乗り上げ
ています。そうしたなか、今年の5月には、とある国会議員が国後島にビザなし渡航をした際に、元島民に対
して「戦争しないとどうしようもなくないですか」などと発言して、世論の非難を浴びました。 このような時代だからこそ、武力に頼る時代錯誤な道とは異なる次のよう
な展望が、26年前に日ロ首脳により領土交渉の出発点として確認されていたことを、改
めて想起する必要があります。「〔日ロ〕双方は、この問題を歴史的・法的事実に立脚し、両国の間で合意の上作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎とし
て解決することにより平和条約を早期に締結するよう交渉を継続し、もって両国間の関係を完全に正常化すべきことに合意する。」と(1993年東京
宣言)。
今、私たちに求められているのは、@歴史的・法的事実に立脚し、A法と正義の原則に従って、この問題を解決すること、道理と説得力をもってことにあたる意
思と知恵、努力にほかなりません。今回の講演では、日露領土交渉を理解するための基本的な知識、すなわち、日ロ間の領土の変遷と、基本的な法的文書などの
「歴史的・法的事実」を確認するとともに、現在の日露領土交渉で何がネックになっているのか、どうしたら解決できるのか、をともに考えます。例えば、日米
安保体制の問題をスキップし、経済協力のみで事態を打開しようとする安倍外交の手法は、すでに限界に達しています。こうした問題をめぐる議論は、戦後日本
はどのような安全保障体制のもとにあったのか、といった私たちの社会・政治の根幹に拘わる問題を再確認する作業にもなるでしょう。 |
日時:11月30日(土)17時30分〜
場所:愛知民主会館 2階会議室(地下鉄「新栄町」2番出口より徒歩1分
資料代:500円
主催:日本ユーラシ協会愛知県連合
会
☎052-932-7211
mail:Eurasia_aichi@yahoo.co.jp