ロシア人捕虜写真展盛況のうちに終了

  7月2日(火)−5日(金)  名古屋ハリストス正教会にて 

 7月2日から5日まで、名古屋ハリストス正教会で「ロシア人捕虜写真展」を開催しました。この写真展では東京ロシア語学院がロシア国立映画写真資料古文書館の協力を得て復刻出版した「ロシア人捕虜写真コレクション」のなかから、名古屋、豊橋の収容所の写真を中心に73点の写真が展示されました。

 7月2日の初日には関係者が集まり、開会式が行われました。開会式では、まず日本ユーラシア協会を代表して丹生会長から「百年前には戦争をしながらも、降伏した敵兵に対しては捕虜として人間的な取り扱いが徹底してなされていたことに驚きを感じた。平和と幸せと人間性とを求める心は全ての人々の心の奥底に秘められていて、いつかはそれが実現すると信じたい思いで一杯です」という挨拶がありました。

 続いてこの写真集の復刻を中心的に担ってきた東京ロシア語学院藻利佳彦主事からこの写真集を復刻するに至った経過や日露戦争中のロシア人捕虜の実態が詳しく報告されました。

 その後、名古屋ハリストス正教会の松島司祭の奥様が、名古屋におけるロシア人捕虜の生活について、教会に残されている写真や資料の映像をもとに説明してくださいました。

 1899年ハーグ条約が締結され、各国の捕虜の取り扱いについては第三国の監視が行われており、日本は手厚くロシア人捕虜を待遇しており、日本人との交流の様子も写真から伝わってきました。

2013年7月2日 写真展開会式 (名古屋ハリストス正教会)


東京ロシア語学院 藻利佳彦主事


ロシア人捕虜写真展のようす (名古屋ハリストス正教会)


ロシア人捕虜写真展のようす (名古屋ハリストス正教会)



ロシア人捕虜写真展開会式での日本ユーラシア協会愛知県連合会丹生会長の挨拶

 私共日本ユーラシア協会愛知県連合会は隣の国であるロシアやその周辺のユー ラシア諸国の方々との友好関係を一歩でも進め、ひいては平和な世界の実現を目指して活動を続けています。

 この度、東京ロシア語学院の創立60周年記念行事の一環として、藻利佳彦さんの御努力により復刻・出版された「ロシア捕虜写真コレクション」に掲載さ れた写真の展示会を、全国に先駆けてこの名古屋のハリストス正教会をお借りして開催されることになりました事は、私共にとりましても大変意義のある事 だと感じております。

 この写真集は百年前の日露戦争当時の前線における戦闘の様子では無く、銃後における捕虜と一般市民との人間味あふれる関係の記録ですが、この写真集を見て感じられる事は、百年前には戦争をしながらも、降伏した敵兵に対しては
捕虜として人間的な取り扱いが徹底してなされていたことに驚きを感じさせられます。

 私共年寄りの記憶に生々しく残っている第二次世界大戦の場合には、捕虜どころか、非戦闘員である後方の一般市民に対してさえ、都市の無差別爆撃が強行され、極めつけは、一瞬のうちに数十万人の市民を殺戮するのみならず、孫・
子にまで放射能障害による苦しみを刻みつけるという残虐がまかり通る事態を迎えていました。その反動として、捉えた捕虜を殺し、また多数の捕虜を抑留して永年強制労働に従事させるなどの事が平然と行われました。

 人間とはなんという愚かなものであるかと深刻にならざるをえません。しかし一方では、平和と幸せと人間性とを求める心はすべての人々の心の奥底に秘められていて、いつかはそれが実現すると信じたい思いで一杯です。この展示をじっくりと見つめ、それらの背後に流れている時間と空間と人間性とについて深く、深く、思いをはせて頂けたらと心から願っております。


 東京ロシア語学院の創立六十周年記念行事の一環として「ロシア人捕虜写真コレクション」が、日ロ共同事業として復刻・出版されました。

 二十か所を超す収容所で撮影された総数453枚の写真は、フランス領事リュシー・フォサリュー氏が集めたものです。

 なぜ、ロシア兵捕虜の写真をフランス外交官が集めたのでしょう?

 日露戦争は、ハーグ条約(1899年)締結後、初めての国家間の大きな戦争でした。条約の「陸戦法規慣例規則」は、戦争によって乗じる捕虜に対し「博愛ノ心ヲ以ッテ之ヲ取扱ヒ決シテ侮辱、虐待ヲ加フベカラス」という一条がありました。

 日本は、ハーグ条約を順守する立場をとり、国を挙げて捕虜対策に取り組みました。フランスは、条約順守状況を監視し、ロシア側の意見を日本に伝える役割を担い、その任務に就いたのがリュシー・フォサリュー領事だったのです。

 最終的にロシア兵捕虜は、7万人を超し29か所の収容所が開設されました。それらを網羅的に記録したのがこの写真集で、まことに貴重な映像の数々です。

 そして、日ロとフランスの国際協力の成果という点でも注目されます。

 今回、全国的な写真展開催に先立って、7月2日から5日、名古屋ハリストス正教会のご厚意で写真展が開催されることになりました。

 スペースの関係で、全写真の展示は叶いません。名古屋・豊橋の写真を中心に、ロシア正教・カソリックの宗教関係の諸行事、捕虜の生活ぶりや、市民との交流など、印象的な写真が数多く、展示されます。

 また、初日7月2日には、午前10時からオープン式典と、今回の復刻・出版を中心的に尽力された藻利佳彦氏(東京ロシア語学院)の記念講演を会場で開催します。

日時 7月2日(火)〜5日(金)
    開場午前10時から午後6時30分(最終日の5日は午後3時に閉会)

場所 名古屋ハリストス正教会 (
電話052−734−9000)
    名古屋市昭和区山脇町1―3―3
    最寄駅 地下鉄鶴舞線荒畑から徒歩5分、JR鶴舞駅から徒歩15分(車でのご来場はご遠慮ください)