第23回ロシア兵士墓地慰霊祭報告

  強風と寒さの中45名が参加
          ロシア総領事からは丁重なメッセージ

  第23回ロシア兵士墓地慰霊祭は、4月7日午後、平和公園ロシア兵士墓地で行われました。日本ユーラシア協会とハリストス正教会関係者はじめ県下の日露友好に関心を持つ人びとが集い、慰霊碑と墓標に花を捧げ、祈り、歌いました。
 
 今年の慰霊祭には早くから在大阪ロシア連邦総領事館代表の参加が予定され、桜の開花も例年より早いことが報道されていました。

 ところが当日は、真冬のような寒気と台風並みの強風に見舞われ、旗や看板の掲示に苦労し、式の進展さえ危ぶまれる状態でした。

  そこに平和公園会館事務所の方が一山越えて駆けつけて下さり、ラティポフ総領事から「すぐ電話下さい」との緊急連絡が届けられました。理事長の電話にこたえて、ラティポフ総領事は、「今新大阪駅で1時間も列車を待っています。新幹線が強風のため止まっていますので、たいへん残念ながら今日の慰霊祭出席は不可能となりました。ご出席の方々にくれぐれもよろしくお伝えいただきたい」との丁重なごあいさつをいただきました。

 新幹線がストップする緊急事態のもとで、平和公園事務所への電話など、地元の人でも思いつけない方法で総領事が自身で連絡してこられたことにたいして、丹生潔県連会長は「約束を守り臨機に対応されたことに敬意を表したい」と述べられました。
 
 定刻が近づくと次々と参会者が到着、主催両団体と来賓、合唱団「ミール」など、約45名が集まりました。高橋満治県連常任理事が開会を告げ、まず死没ロシア兵士、日露両軍の戦没兵士、東日本大震災死没者の冥福を祈って全員で黙祷、主催者を代表して丹生潔日ユ協会県連会長があいさつ(別項)しました。続いて日本とロシアとの友好親善をすすめる愛知の会片桐清高会長があいさつをのべ、各団体代表者が慰霊塔に献花を行いました。

  名古屋ハリストス正教会松島雄一司祭と聖歌隊によるパニヒーダ(追悼の祈り)が死没15名の名前を読み込んで行われ、参列者全員が各墓前に花を捧げました。

  県連合唱団「ミール」が「ロシアーわがふるさと」と「ふるさと」を浜島康弘指揮、入江文子アコーデオン伴奏で歌い、最後に安原勝彦県連理事長が、悪天候をついて多数の方々が参列されたことに感謝のことばをのべました。

  終了後はパミンキ(追善のもてなし)をワインを酌み交して行い、桜散る中で終了しました。雨がぱらつく程度で終わったことはせめてもの幸いでした。

  参加は実現しませんでしたがご努力されたラテイポフ総領事、平和公園事務所の方、全参加者の皆さんに深く感謝申し上げます。 (た)




<丹生会長のあいさつ>

日ロ平和条約は引き分けの精神で

 本日は第23回ロシア兵墓地慰霊祭に御参列頂きまして誠に有難うございます。主催者、日本ユーラシア協会愛知県連合会を代表して、厚く御礼申し上げます。この墓地には100年余り前の日露戦争の際に捕虜となり、名古屋に抑留中に不幸にも病気になられ、故国ロシアに生きて帰る事が出来なかった15名の方々が永遠の眠りについておられます。もともとは市の中心部近くに手厚く葬られていましたが、70年程前の第2次世界大戦後に旧日本陸軍の墓地と共にこの地に移された後、残念ながら40年近く放置されていました。しかし、1990年末に私共日本ユーラシア協会の会員によって再発見されて以来、名古屋ハリストス正教会や、在大阪ロシア総領事館の御尽力を得ながら再整備され、毎年桜の季節の4月の第一日曜日に、慰霊と世界平和への願いを込めた催しが継続されてきました。

 世界の平和と言えば、私達は皆心からそれを願っておりますが、悲しいことに現実の世界では、それとは程遠い状況が続いております。わが国は、先の世界大戦で周りの国の方々に大きな被害を与えましたが、自らも壊滅的に破壊されるという不幸な経験を致しました。それを深刻に反省し、再びその様な事を起こさないことを誓い、憲法にその決意を明記して守ってきました。そのために70年にもわたり、我が国は国外の方々を一人たりとも傷つけ殺す事もなく経過することが出来ました。しかし、この状況は私共の一方的な努力のみで今後も守りきる事は困難です。周りの国々、その中にはロシアも含まれますが、周りの国々との間には国境問題という難問が未解決のまま経過しております。竹島、尖閣諸島、そしてロシアとの間にも北方領土問題があり、また、戦後70年にもなるのにロシアとは平和条約さえ結ばれないという残念な状況が続いております。

  どうすればよいのでしょうか? お互いに良識を持って話し合いを続けることが必要ですが、最終的にはプーチン大統領の言葉にもありますように「引き分け」の精神での決着が最良の方法ではないでしょうか。今年初めに森元首相がロシアを訪問して地ならしをしましたが、来る5月には安倍首相がプーチン大統領と会談する予定と聞いております。話し合いが成功し、平和条約が結ばれ、両国民が晴れて友好関係を更に深めあうことが出来るようになる事を心から望んでおります。

 今日ここに集う皆様方はこれまでも日本とロシアやユーラシア諸国の方々との友好関係を一歩でも進めるために、それぞれの団体の活動で、小さいながらも確実な歩みを続けてきております。国際的なしがらみを一つ一つ注意深く解きながら、その輪をさらに大きくし、平和で豊かな世界を望む大多数の人々の力を結集し、目標の達成に向けての努力を更に積み重ねようではありませんか。皆様と共に手を取り合い、勇気と希望を持って頑張り続ける事が、ここに眠る15名の方々の霊を慰める最善の道である事を確信し、今日の慰霊祭の開始の御挨拶と致します。


2013年4月7日        日本ユーラシア協会愛知県連合会会長 丹生 潔

参列者の感想

 大変な暴風と寒さの中でもしっかりと祈りを捧げる皆様の姿に感動しました。力強いアコーデオンの音色も忘れられません。心からロシアと日本の友好関係を願っていらっしゃることがその姿を通してつたわってまいりました。
  豊田市 Sさん(女性、今年2月入会)

 シベリア抑留者は高齢のため、参加は私一人のようです。
  このように追悼の会を開いてもらえる人は幸運なほうです。シベリアで亡くなった私の戦友を埋めた場所は、今は密林となっています。
  春日井市 河村廣康氏