第56回ロシア語サロン  2005.3.6

ロシアで最もユニークな町のひとつーアカデムガラドク

                   ナタリア・アスターホヴァさん

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 ノヴォシビルスクのアカデムガラドクは 非常に優れた科学研究施設があつまっている 自然に恵まれた美しい町です。ロシアの東部では一番大きな町ノヴォシビルスクから40キロ離れた、オビ湖のそばの松と白樺の林の中にあります。ここには工場はなくて 大部分は科学研究施設や森に囲まれた住宅地です。アカデムガラドクは世界で初めての総合的な科学センターとして作られました。ここにはロシア科学アカデミーの計画に基づいてあらゆる分野の基礎科学の研究施設が建設されました。長さ2キロのラヴレンチエフ通りだけでも四十以上の科学アカデミーシベリア支部の科学研究施設やデザイン工学研究所があります。アカデムガラドクの市民の多くは科学に関係する仕事をしています。

 主な研究所の名前を挙げますとソボレフ記念数学研究所、コンピューター数学・地球物理学研究所(コンピューターセンター)、情報学総合研究所(コンピューター工学研究所、エルショフ記念情報システム研究所を含む)、コンピューター工学・デザイン工学研究所(数学とコンピューター情報工学の発展を目指す)、また物理学の分野で研究と開発に従事している研究所としては ブッカー核物理学研究所、レーザー物理学研究所、半導体物理研究所(応用マイクロエレクトロニクスデザイン技術研究所、オートメーションおよび電子計測研究所(この研究所の中には科学装置製作デザイン技術研究所があります)があります。

 私が20年間働いている細胞学遺伝学研究所は 生物学的変異とシベリアの自然資源という二つの分野で研究を進めており 地元の動物の遺伝子を集めた温室、飼育場(自然の状態で観察する)、実験用飼育場を備えています。というわけで 当然のことですが アカデムガラドクでは地域やロシアの、そして国際的な会議やシンポジウムがよく開かれます。

 それでは ちょっと昔のアカデムガラドクをのぞいてみましょう。

 1950年代 国の課題のひとつが シベリアでの生産力を急速に発展させることでした。この地方の自然資源の需要が高まり ロシア東部での調査・研究を強化することが必要となったのです。初めて モスクワやレニングラードから離れたところに 科学研究施設の建設が計画されました。

ロマノーソフの言葉
Российское могущество прирастать будет Сибирью.                  ロシアの力は シベリアとともに増してゆく
(ロマノーソフは18世紀のロシアの偉大な自然科学者、文学者。)

 モスクワやレニングラードから学者の大集団がノヴォシビルスクに引っ越してきました。最初の小屋が「オオカミの谷」というところに建てられました。ここは最初の移住者がすぐに「黄金の谷」と名前を変えました。当時の町の面積は700ヘクタールでした。

 最初の移住者たちには必要なものはすべて与えられました。その上 最初の頃は熱意に燃えてよく働きました。そしてしばらくするうちに ノヴォシビルスクの学者たちの発見を利用して得られた成果は この町の建設や維持にかかる費用をはるかに越えるようになりました。

 ロシア科学アカデミーシベリア支部の創設者の一人であり初代の支部長となったのは優れた物理学者であり数学者であったアカデミー会員のミハイル・ラブレンチエフでした。ラヴレンチエフ、ソボレフ、フリスチアノヴィッチなど有名な学者たちの存在が ロシア西部から才能ある研究者をシベリアの科学の発展へとひきつけたのです。

アカデムガラドクの教育

 ノヴォシビルスク国立大学はアカデムガラドクを代表する高等教育機関です。最初の研究所の建設とほとんど同時に創立されました。この大学はすぐに国内でも世界においても 指導的な立場を占めるようになりました。またアカデムガラドクの学者たちの協力を得て 高い専門能力を持ったスペシャリストの養成のための一貫教育システムが開発され 世界的に名声を得ています。それはつまり 学生は物理数学学校―国立ノヴォシビルスク大学を経て各研究機関へと連続して学んでいくということです。

 町を作った人たちは ここの自然美を生かすためにたいへんな努力をしました。道路は美しい林を迂回して作られました。建物は緑にうずもれるように建てられています。大通りと住宅地との間には広い松林が緑地帯として残されました。
こうして 町では四季折々の美しい景色を見ることができるようになりました。
特に秋は まるで夏の間に貯めこんだすべてをちりばめたようなうつくしさで私たちをうっとりさせます。そして冬にふかふかの雪でおおわれた姿もまたすてきです。

    冬は寒いのですが 夏は時々南の地方のように暑くなります(40度近くにもなります)。そんな時にはオビ湖の涼しさがありがたいですね。1956年にノヴォシビルスクの近くを流れていたオビ川が 水力発電所のダムのためにせき止められて人造湖ができました。これがオビ湖です。奥行きが200キロ、幅が20キロほどの湖です。

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