第39回ロシア語サロン  2001.10.28

厳しい試験と成績査定
ウクライナの教育について
           ミハイル・ヤーコヴレフさん

 第三十九回ロシア語サロンは、ウクライナ出身の物理学者ミハイル・ヤーコヴレフさんをゲストにお招きして、三カ月ぶりに十月二十八日(日)に開かれました。日本では、ロシアより情報の少ないウクライナですが、今回は、その教育制度についてお話ししていただきました。
 ヤーコヴレフさんは1968年、ウクライナのハリコフ市で生まれ、地元のハリコフ国立大学を卒業。現在は岐阜県土岐市の核融合科学研究所で研究生活を送っておられます。
 趣味は多彩で、読書、写真、自然、歴史、コンピュータ物理学の他、不思議な自然現象、古い不思議な遺跡、史跡、音楽、スポーツ、ガーデニングなどにも興味があり、好きな和食は「寿司」だそうです。以下はお話の要旨です。

 ウクライナの子供たちは、2歳まで保育園、2歳から7歳までは幼稚園で教育を受けます。6−7歳で学校に入学し、8年間から11年間学びます。最初の3年間は、ごく基本的な読み書き、計算、音楽、図画、体育などを習い、4年生からは、もっと本格的に数学、文学、科学などを勉強します。
 学校のほかにピオネール会館があって、それぞれの希望に添って無料で楽器やチェスを習ったり、動物のことを勉強したり、編み物をしたりするクラブ活動もできます。また、普通の学校の他、数学や音楽を重点的に指導する特別な学校もあり、私自身も当時のソ連で4校しかなかった数学学校の出身です。
 学校で勉強以上のレベルで数学や物理の成績を競うコンクールもあり、私は10年生の時にウクライナで3位になりました。
 8年生を終えたところで試験があります。筆記試験の他に口頭試験もあります。試験場では、8年間で習ったことについての質問が3問ずつ書かれた用紙が数十枚、机の上に伏せて置いてあり、自分でそのうちの1枚を選んで口頭で先生の質問に答えるのです。選んだ問題が苦手なものだったら(試験官の先生にもよりますが)もう一度、問題を選び直すこともできます。これに合格したら、さらに3年間もっと高度な勉強をして大学を目指します。
 合格できなかったら、すぐ仕事に就くか、各種専門学校に行って職業教育を受けます。
 大学入試は、それぞれ専攻によって受験科目が違いますが、専門科目の成績ばかりでなく、それまでの学校の成績全般も考慮に入れて合格者が決まります。
 単科大学と総合大学があり、5−6年間勉強します。出席や普段の勉強態度も加味されて勉強の成績は厳しく査定され、学生たちは必死で良い成績を取ろうとしたものです。(優等生の奨学金は普通の学生の5割増しでした)
 歴史的に見ると、教育に関してはキリスト教が大きな役割を果たしたと言えるでしょう。最初にできた学校は教会附属のもので、基本的な読み書きや計算を教えました。最近では私立の学校も増え、国立大学でも授業料が有料になったり、入試に落ちた人でも割り増しの授業料を払えば授業が受けられるようにしている所もあり、教育の状況は変わりつつあります。
 ウクライナの独立以来、公用語はウクライナ後になりましたが、歴史的経緯もあって東部ではロシア語を母国語としている人が多いのです。
 大学ではどちらの言葉で授業を受けるかを選べることになっています。実際にはロシア語でしか教えられない教授しかいないというのが現実ですが、次第にウクライナ語での教育が主流になっていくでしょう。