第38回ロシア語サロンは、ゲストにトゥーラ市出身のセルゲイ・ミハイレンコさんをお迎えして7月29日に行われ、「トゥーラとヤースナヤ・パリャーナ(トゥーラ市近郊にある文豪トルストイの領地で、屋敷やお墓がある)」についてお話ししていただきました。
ミハイレンコさんは、モスクワ大学化学・経済学部卒業後、文部省の奨学金を得て1996年名古屋大学に留学。日本語の勉強は来日してから始めたそうです。以下はお話の要旨です。
トゥーラはモスクワの南西150キロにあり、人口は約50万人で、モスクワより一年年上(一年だけですが)の町だということを市民は誇りにしています。
静かで落ち着いた町の中心にはリスや白鳥、鹿のいる公園があり、市民の憩いの場所となっています。
政治的には共産党の勢力が非常に強く、知事は党員のスタロドュプツェフです。数々の失政にもかかわらず、数ヶ月前、彼は再選され、その政策でトゥーラは工業が発達し、道路網が整備されているのに、モスクワやサラトフなど民主勢力の強い町に比べて、色々な面で立ち遅れているのが残念です。
トゥーラは昔から職人の町として知られていたため、ピョートル大帝は、ここにロシアで初めての武器工場を建てました。現在もここでは狩りをする人たちが憧れるライフル、また機関銃、速射砲などが生産されています。ソ連時代には試射場もあり、ここで夜中に響きわたるただごとならぬ銃声が、このことを知らされていなかったよその町からの旅行者をパニックに陥れたこともありました。
物騒でない特産品といえば「プリャーニキ」(糖蜜菓子)です。このお菓子の製法はずっと秘密にされていて、本物の美味しいプリャーニキはトゥーラでしか食べられません。他の町で売っているプリャーニキはまがい物です。
トゥーラはまた、サモワールでも有名です。ロシア語には「トゥーラに行くのに自分のサモワールを持っていく」という表現がありますが、これは「愚かなことをした」という意味です。
しかし、何といっても世界中から人々がトゥーラを訪れるのは、ここから14キロのところにあるヤースナヤ・パリャーナ」があるからです。
「アンナ・カレーニナ」や「復活」等の長編がここで書かれました。
現在は自然公園になっていて、その広さは400ヘクタールで、その半分が森になっています。私は、子供の頃、ここへ満員バスに揺られて出かけました。スキーにもよく来ました。
ここでは建物も自然も19世紀そのままの雰囲気が保たれていて、四季折々の美しい姿を楽しむことができ、魂が安らぎます。
最近、ヤースナヤ・パリャーナ駅を、82歳のトルストイが最後に見たままの姿に復元することが決まりました。9月に駅舎が完成し、モスクワからここまで電車で来られるようになります。ロシアに来られたら、ぜひここに足を延ばしてください。一生忘れられない思い出になると思います。