第35回ロシア語サロン  2001.2.18

ロシア美術館所蔵の古代ロシアの美術品について
                     オリガ・セルゲーエヴァさん
 第35回ロシア語サロンは、土岐市の文部科学省核融合研究所に勤務する夫に同行して来日したオリガ・セルゲーエヴァさんをゲストにお迎えして2月18日開かれました。オリガさんはサンクト・ペテルブルグの美術大学を卒業しているだけあって、芸術に対する造詣が深く、お話のテーマも「ロシア美術館所蔵の古代ロシアの美術品について」です。

 ロシア美術館は、サンクト・ペテルブルグの中心にあるミハイロフスキー宮殿の中にあります。アレクサンドル一世の弟ミハイル大公のために建てられた宮殿ですが、その死後。アレクサンドル三世の命令でロシアで最初の「ロシアの美術品を収める美術館」になり、最近創立100周年を祝いました。
 ここには十世紀からのロシアの絵画のコレクションなどが40万点以上も収められています。今回は、この中からイコンについてお話ししたいと思います。
 イコンは、教会の内部を装飾するために描かれた絵です。イコン作家たちは、修道僧たちで、特殊な加工をした松の板に手製の顔料を使って描きました。金色は本物の金を薄く伸ばして上からニスを塗りました。
 イコンの制作は、ロシアがキリスト教を受け入れた10世紀から始まりました。当時のロシアは、キエフ・ルーシと呼ばれ、ドニエプル河によって結ばれた都市によってバルト海から黒海まで広がる国家で、中心はキエフでした。
 自然を崇拝する異教の信者だったキエフのウラジーミル公が、ヴィザンチウム帝国の皇女と結婚し、ギリシャ正教に帰依したのは988年のことでした。それ以降、正教の教会が建てられ、イコンも発達しました。最初はギリシャ人たちに教わって描いていたいたのですが、次第に独自のイコンが描かれるようになりました。
 イコン作家たちは、自分の作品に署名しないことが多いのですが、一番有名なのは14世紀のアンドレイ・ルブリョフです。彼は若い頃はクレムリンのブラゴベシェンスキー聖堂のフレスコ画も描きました。トロイツキー聖堂とスパスキー聖堂を飾るイコンを描いたので有名なのがダニール・チョールヌイです。クレムリンの武器庫の装飾をしたのはシモン・ウシャンコフとその弟子たちでした。こういう人たちの作品もロシア美術館で見ることができます。
 ロシア美術館は、古代の宝飾品のコレクションでも有名です。お見せしているのはロシアの貴族の女性たちのイアリングで、これらはキエフの修道院の敷地に埋めて隠してあったのを掘り出したものです。1240年、タタール人が攻めてきたときに隠されたもので、薄く延ばされた金でできていて、エナメルで装飾されています。中が空洞になっているのは香油を入れるためでした。とても手の込んだ優れたデザインのものが多く、それをコピーしたものは現在でも女性に人気があります。