ロシア語のすす め
ロシア語は難しくて、とっつきにくい言葉だと思ってい ませんか? いえいえ、ロシア語は日本人にとっては学習しやすい言語かもしれません。ロシア語の魅力、楽しさなどをロシア語の先生やロシア語学習者のみな さんに紹介していただきます。あなたも是非、ロシア語を勉強してみませんか。きっと違った世界が見えてきます。
 ロシア語 を通じてなにを感じられるか                        ロシア語上級クラス受講生 長瀬宏子

ロシア語を 通じてなにを感じられるか
長瀬 宏子

"Мисо суп"
私がロシア語を学び始めてすぐの頃、最初に書いてみたのはこの言葉でした。
発音は、"みそ すっぷ"
意味は、"みそしる"
ロシア語で汁物全般を指すСупという単語、日本語の味噌、をローマ字 化して組み合わせただけの簡単な表現で、10年以上日本食ブームが続いているロシアで味噌汁をあら わす言葉として定着してきたといいます。

どうしてこんな言葉を、わざわざ書いてみたのか。
それは、この言葉こそがロシア語を学ぶ原点だったからに他なりません。

私がこの言葉を知ったのは30年以上も前、教えたのは樺太(現サハリン)に長く長く暮らした祖母で、祖母が表現 として覚えたのは60年も前に遡る、ソビエト軍による占領統治時代。
日本人家庭と連邦内から移住してきた各国の移民家族を同じ家に住まわせるという政策がとられた時期があり、台所を共同使用して いた同居人が編み出した造語だったそうです。
知識人階級だった祖母や2人の大叔父は、ほんのわずかな言語、文化的な 交雑をおもしろがって思い出話のひとつとして私や母によく話して聞かせ、"みそ すっぷ"は私たちにとって、最初のロシア語でもあり、既に亡くなった3人 を回想するとき必ず思い出す、特別な言葉でした。

しかし、それだけが原点ではありません。
母や、大叔父の子供たちの中に、ロシア語を学んだ者は一人もいないのです。
亡くなった3人が、ロシア語の読み書きに堪能だったにもかかわらず、私 たちは"みそ すっぷ"を平仮名でしか知ら ず、知ろうともしなかったのです。

彼らの思い出話には楽しいことばかりではなく、聞くに堪えないつらい、ひどいことも沢山ありました。
日露両国の言語や文化を身につけて日本へ渡った彼女たちがうけた迫害も、思い出話のひとつです。
ロシア語を学ぶことは社会の敵になってしまうこと、だから子供達には教えなかった、とも。

そんな時代があった、現代は自由だ、いつか私たちの暮らした、美しく豊かなふるさとを訪れることができるかもしれない、懐かし い、帰りたい。
ベルリンの壁が崩壊する頃に生まれた私にだけ、彼女たちは郷愁を語り、きっと日本語は通じない土地だから、と言い残しました。
"
みそ すっぷ""мисо суп"へ。
"Мисо суп"
を通じて、ロシア語を学び、かの土地でなにを感じるか。

人によって、ロシア語を学ぶ理由、継続するモチベーションも様々でしょうが、ロシア語を通じて、なにを感じられるか。
これを私の、ロシア語のすすめとさせていただきます。

新しいロシア語を知ると 新鮮な気持ちになり、次の授業が待ち遠しい      ロシア語講座初級クラス受講生  S.D

今では、テレビやSNSなど簡単に海外の情報が見られます。私は海外へ行っ たことはありません。仕事の都合などで行く機会もないので、日本にいる外国人と交流してその国の事を知ろうと思い、イベントなどに参加し外国人と交流を始 めました。

私は英語が話せませんが、日本にいる外国人は日本語で一生懸命話してくれ、 自分の国のことを私に教えてくれました。私には知らない世界ばかりだったので、交流はとても楽しかったです。私も英語で話せればもっと会話が弾むと思い、 英語を一時期勉強しましたが面白くなく、長続きしませんでした。

交流が続く中、ある日ロシア人に出会いました。ロシア人にも、ロシアの音 楽、食べ物、文化などたくさんの事を教わり、実際に日本でロシア料理が食べられているので食べてみたり、音楽をきいたりし、体感するとロシアに少しずつ興 味を持つようになりました。

初めてロシア語を見たときは、呪文みたいな文字。全く読めませんでした。文 字の意味を知った時は驚きと、新しいものを発見した、面白い、とてもわくわくした気持ちになりました。

そこからロシア語を学びたいと思い、アプリや動画、本などの勉強で、独学で 勉強しました。勉強すると発音が難しい。「これであってるのか?」とギモンになることもあり、実際にロシア人に聞くと発音が違うみたいで、教えてもらった ように発音をしますがロシア人には納得してもらえず、少し悔しかったです。

基礎から見直そう。講座にいけば正しい発音が身に付く、ロシア語を一から勉 強しようと思い、ネットでロシア語講座を探しました。すると、「日本ユーラシア協会」というサイトを見つけロシア語講座があると書いてありました。講座が いくつかあり、詳しい話を聞きたくて協会へ行きました。協会の方は親切で、とても親しみやすい人でした。ロシア語講座を説明してもらうと私は、「基礎から 学びたい。ここで学習してみよう」という意欲がわいたので講座を申し込みました。

私の講座は初級で基礎から学ぶクラスですが、ロシアのアルファベットと言わ れるキリル文字は、実際に11つ特徴を知ってから発音すると今まで自分で勉強していた事と違う、ロシア人 が納得しなかった事に気づかされました。

講座はまだ始まったばかりですが、覚えの悪い私に対し先生は優しく声をかけ てくれ、質問もしやすい環境なので何度も同じ事を聞く私に先生は熱心に教えてくれます。1つでもロシア語を知ると、その度にとても新鮮な気持ちになり、もっと学習し たいと、次の講座が待ち遠しいです。

ロシア語の持つ美し い響きに魅了され      日本ユーラシア協会愛知県連ロシア語講座  上級Aクラス受講生  加藤士朗

  私がロシア語に興味を持ったきっかけは2003年にロシア映画を字幕付きで見たことによってです。英語とは全く異なるロシア語の持つ美しい響きに魅了させ られました。そして私はロシア映画のDVDを何本も買い、あらすじはもちろん次に出てくる会話がわかるようになるまで繰り返し鑑賞しました。またロシア語 が話されているのは隣国でもあることからロシアに4回旅新しいロシア語を知ると新鮮な気持 ちになり、次の授業が待ち遠しい行し、フェイ スブックやラインのメル友もできました。それまでは聞くのみだったロシア語ですが、 2008年にシベリアのチタ在住のロシア人と出会い、彼からロシア語を教わり始めました。以来今日まで現在モスクワのロシア外務省に勤めるこの友人から毎 月2回スカイプでロシア語を学んでいます。

  2016年に私は 退職して非常勤職員となりました。時間にゆとりができたことから中京大学で2年間ロシア語を学んだ後、この度日本ユーラシア協会愛知県連のロシア語講座を 受講させて頂くことになりました。中京大学ではロシア語作文、文法を学ぶ傍ら先生から詩の朗読を教わりました。ロシアの詩は中国の漢詩に勝るとも劣らぬ美 しい韻を持っています。私は詩にも興味が芽生えました。文法を学んだ後は会話にも挑戦し、さらに詩を学んでいきたいと思っています。退職後の人生に夢を与 えて続けてくれるロシア語と出会えたことを私は嬉しく思っています。

  さてこれから語学の教養を身につけたいと思われていらっしゃる皆さん、ロシア語はキリル文字で表わされていますが、文字さえ覚えれば簡単に読めるようにな ります。また今はユーチューブでもロシア語の番組が数多く公開されていますし、面白いアニメもたくさんスマホで見られます。一度ロシア語を聞かれるときっ と私のようにその美しい響きが心に残ると思います。そして少しでも興味を持たれたら先ず行動、愛知県連のロシア語講座は昼間、夜間、休日にわたり15講座にも及 ぶ多彩なプログラムが用意されています。私の講座は少人数で和気藹々とした雰囲気、先生も親しく接して下さり、毎回の受講が楽しみです。ぜひ私たちと一緒 に愛知県連でロシア語を楽しみましょう。

  ダ・フストレーチ!

少しでもロシ アに興味を持たれたら、ロシア語を勉強して!           日本ユーラシア協会愛知県連ロシア語講座受講生 S.S.

私 がロシア語に興味を持つきっかけとなったのは、201112年 に当時勤めていた会社の海外派遣でロシアを訪れたことです。

  それぞれ約1ヶ月の滞在でしたが、一般的には馴染みのないロシアということもあり、会社からも『ロ シア語は難しい。とりあえず英語のできる現地スタッフがいるので、英語を覚えていきましょう』ということで、仕事中に使う英語を詰め込んでいきましたが、 元々英語もできませんし、英語のできるスタッフ以外のメンバーやロシア人のお客様とはロシア語が理解できていた方が、コミュニケーションが取れるなと実感 したからです。
  現地スタッフの方と一緒に仕事をしてみると、今まで想像していたロシア人のイメージと異なり、女の子達は明るくてとってもおしゃべりで、お互い言葉は通じ なくても人柄の良さを感じましたし、とても魅力的な人たちばかりでした。最初に訪れてから6年経ち ますが、今だに誕生日などは翻訳アプリを使ってメールのやりとりをしています。

し かし、翻訳アプリでは思った事がちゃんと伝わらないですし、ロシア語の本を何冊も買ってみましたが、『やっぱり基礎からちゃんと教えてもらいたい』という 思いが強くなり、ユーラシア協会のロシア語教室に通うことにしました。

  実際通ってみるとやはり難しくて、なかなかついていけてないところもありますが、これだけわからなくても休むこともなく、毎週『行きたい』と思うのは、ロ シア語への興味が尽きないことと、レッスンの雰囲気や先生のご指導が私にとっては心地いいからだと思います。毎週先生やレッスンを受けてる他の方にも私の レベルが低すぎて、『ご迷惑ですよね〜?』と心の中で思っていますが、丁寧にご指導とフォローをして頂き、楽しくレッスンを受けています。先生から聞くロ シアの話も楽しいし、ロシア語に興味のあるメンバーの方との会話もとても楽しいです。少しずつではありますが、ロシア語が読めたり、意味が理解できるよう になってくると、ますます楽しくなってきています。

  日本人にとってはまだまだ馴染みのない国ですが、これからサッカーのワールドカップ等で訪れることがある方もいらっしゃるかと思いますので、少しでも興味 を持たれたら、ロシア語をお勉強して頂くと、ロシアという国の魅力にはまってしまうと思います! 

 楽しい授 業 で、充実感がいっぱい                                        日本ユーラシア協会愛知県連ロシア語講座受講生 Y.T

私は趣味で自然観察や動物、 料理の動画を投稿しています。ある日、見慣れない外国語の文章で書かれたコメントが来ました。早速インターネットの翻訳機能で調べてみると、それはロシア 語で「あなたの動画は面白い。私の動画チャンネルを見てください。」と書いてあるのが分かりました。その時に「ついでだからロシア語で自分の好きな動物を 検索してみよう」と思い立ちました。試しに「кошка(猫)」と調べてみると、な んと素敵な投稿がいっぱいあるではないですか。意外にも彼らは動物好きな一面があるという事を知りました。そこからロシア人の性格に心惹かれ、現在に至り ます。

周りのロシア語受講者は、仕 事の関係であったり、芸術の分野で活躍されている方がほとんどです。私のように趣味で始める方はほぼ皆無で、それがモチベーションを維持するのに大変だと いうことに気づきました。 最初の授業でその難易度の高さに唖然とし、あきらめようとしたのですが、そう思ったのも束の間で、数週間後には楽しく講座に通 えるようになりました。なぜそうなったかというと、ズバリ、授業がとっても面白いからです。講師の方が、毎回授業を工夫したり、ロシアの歴史や芸術、文 学、音楽、そして文化なども教えてくれて「楽しく学ぶ」クラスづくりをされているので、毎回講座が終わると充実感でいっぱいになります。なので、それが自 分 のやる気に繋がりました。

そして、授業を受けていくう ちにいくつか目標が出来ました。それは、「ロシア人の友達をたくさん作る」事と「日本の文化や伝統、最新の流行を伝える」ということです。私は早速ロシア や旧ソ連の国々の方の圧倒的登録者数を誇るVK(フ・コンタクテ)やアドナクラースニキといったフェイスブックのようなSNS(ソーシャルネットワーク サービス)を始めてみました。今少しずつですが友人の数が増えていっています。また、ベラルーシ製の無料通話アプリViberも現地の方とのやりとり出来 るので大変重宝しています。

 ほ んの1年前までは一切眼 中になかったロシア。それが今ではキリル文字が読め、簡単な日常会話がやり取りできるようになりました。ぜひ、あなたもぜひ一緒に楽しくロシア語を学びま しょう
ロシア語 を学習して、日本語を再発見しよう!       山崎タチアナ先生(日本ユーラシア協会愛知県連ロシア語講師)

ロシア語は私の母語です。私は言葉を話 し始めて以来、自分の母と同様に、自然にその母語を愛しながら育ちました。

 そして、日本で自分の母語を外国語と して教え始めてから、改めてロシア語の魅力に目覚めました。距離を置いて「ロシア語」という「山」を眺めてみると、そこには名詞や動詞の多様性(接頭辞と 接尾辞によりニュアンスが変わること)及び語彙の豊富さ(自然界から生まれた慣用句の数々)が織り成す「ことば」が入った大きな宝箱が浮かんで見えます。

 ロシア語を教えながら、常に母語の表 現を日本語に訳したり、両者の相違を考えたりすると、毎日といってもいいぐらい二つの言葉を照らし合わせる楽しいゲームをしている気分になります。「これ はロシア語で何というでしょうか。この表現は日本語に直したら、どう響くのでしょうか」、いつも少なからず新しい発見があります。

例えば、日常大いに役立つ先祖たちの知 恵、いわゆる「おばあちゃんの知恵袋」という表現を聞いたら、ロシア語にも「おばあちゃんの長持の秘密(Секреты бабушкиного сундука)」というほぼ同じ表現があると分かっ て、わくわくします。

ロシア語そのものだけでなく、日本語を 母語に持つ皆さんにとって、ロシア語の学習は自分の言葉の美しさと豊かさの再発見につながると思います。

長年培った生活の様式とその知恵、感情 の表し方、文学的なセンス、大自然に対する想い、全ては「ことば」となり、ロシア語を母語としている人々の理解に繋がります。更に、東スラヴ族のウクライ ナ語とベラルーシ語は勿論のこと、西スラヴ人、南スラヴ人の言葉、そして旧ソ連の他の国々の言葉にも突破口となるロシア語の役割は大きいはずです。

ロシア語、そして数年前から始まったウ クライナ語を是非習いに来てください。
 
Ждём вас на уроках русского языка!

    Чекаємо вас на уроках української мови!
どうしてロ シア語を勉強しているのですか?           市川春季先生(日本ユーラシア協会愛知県連ロシア語講師)

「どうしてロシア語を勉強しているので すか」と、よく私は人から訊かれる。

 この前も、私が心筋梗塞のために名大 病院に入院していた時、入院中は暇で退屈なためロシア語でゴーリキーの「母」を読んでいたら、何人かの看護婦から不思議そうな顔をされて「何を読んでいる のですか」と訊かれる。私がロシアのことを少し話すと、そのあと人によっては「ロシアは怖くないですか」という質問が跳ね返ってくる。やはりこの中京地区 ではロシア語というのはマイナーな言語で横文字の文章とみると英語か何かと思うらしいし、ロシアについてはまだまだ馴染がない。そこで私はロシアやロシア 語について蘊蓄を傾けるのである。

 「ロシア語はむつかしい言語だ」とよ く言われるが、これは人から聞いた話であるが、今はもう亡くなられた日本におけるドイツリートの第一人者であったバリトン歌手の中山悌一が「ロシア語は難 しい言語だ」と言っていたそうだ。

 私に言わせればどんな言語もむつかし いし、習得に易しい言語なんていうものはありえない。ただ世界の言語を系統樹で並べた時、同じ枝に連なっている言語どうしは学習しやすいと言われている。 ロシア語は系統樹的に見て日本語とは全く違った言語ではあるが、我々日本人にとってロシア語は学びやすい言語ではないだろうか。その理由の一つは、言語表 現の発想が似ていると思う。例えば日本語で「象は鼻が長い」という表現があるが、これにぴったりの表現がロシア語にもある。

 かてて加えて、異言語を学ぶというこ とは、もちろんその言語を使ってその言葉を話す人とのコミュニュケ―ションをはかるというのが重要な目的の一つであるが、私の場合、ロシア文学をロシア語 で読むというのが目的で、ロシア文学の翻訳・研究は明治初期の二葉亭四迷からの伝統もあって膨大なものがある。因みに「アンナ・カレーニナ」の翻訳では、 ざっと調べたものだけでも12種類ある。人間、だれでも「老い」を迎 えるのであるが、その老いを迎えた時の最良の暇のつぶし方が私にとってはロシア語でロシア文学を読むということだ。お金はかからないし脳の活性化に繋がり ボケ防止になるのではないだろうか。